高精度高速小径微細加工機「MEGA-SS/SD」の機能と特徴|碌々産業株式会社|高精度高速小径微細加工機、特殊加工機、プリント基板加工機の製造・開発

 

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高精度高速小径微細加工機「MEGA-SS/SD」の機能と特徴 機械と工具 2013年8月号掲載

1.はじめに

製造業がコスト低減を求めて海外に進出していく流れの中で、国内に残るものづくりは、高付加価値を求める製品が主流となっている。特に、情報通信を中心としたIT関連の分野では、小型・薄肉化による性能の向上を図る目的で、金型に於ける高精度化、微細化が益々進んでいる。
同時に、微細加工分野においても短納期、コストダウンが求められ、バリレスの電極加工や磨きレスの直彫り加工が望まれており、安定した高精度な加工を実現できる微細加工機や高精度な切削工具などトータル的な取り組みが必要とされている。
当社の微細加工機への取り組みは、1996年に微細金型加工や極小径の穴明け加工を対象としたMEGAを開発した所から始まっている。その後、年々、要求される精度が厳しくなっていく中でMEGAⅡ、MEGAⅢ、MEGA-Sと進化を重ね、昨年のJIMTOFにて様々な部分でバージョンアップをした「MEGA-SS/SDシリーズ」を発表した。
MEGA-SS/SDシリーズ」では、3次元形状の金型加工や部品加工に対応した「MEGA-SS」、高精度な小径穴明け加工における高生産性に大きな可能性を有する「MEGA-SD」と2系統に分離し、多様化するニーズに対応している。
本稿では、最新の高精度高速微細加工機「MEGA-SS/SD」の特徴と微細加工実例を紹介する。

2.微細加工へのアプローチ

昨今の高精度化や微細化の要求に対応する為には、加工機械だけでないトータルでの取り組みが必要である。大きな要素として、微細加工機、ホルダを含む切削工具、CAD/CAM、環境の4要素(四位)があり、それぞれ下記の様な事柄について考慮する必要がある。
①微細加工機
回転時でも動的な刃先振れが小さい高性能主軸を搭載しており、高速回転でも長時間安定した刃先先端位置を維持する為の熱変位対策が施されている事が重要である。更に、安定した微細切り込みを実現する為の高精度高速追従性が必要である。
②切削工具
耐摩耗性に優れ、加工性能が安定して持続する事や形状精度が高く、高速回転時のバランスに優れている事が切削工具には必要である。
工具を保持するホルダも工具先端部での動的振れを極力抑える為の高精度なバランス精度が必要とされる。
③CAD/CAM
微小なトレランスでの処理が可能な事が必要であり、小径な工具に於ける微小切り込みでも一定した間隔で軌跡が生成できる事が重要なファクタである。
また、工具負荷を低減する為のアプローチ等、微細加工に対応したデータ生成が可能な事が必要である。
④環境
温度、湿度、振動が安定しており、これらの情報が管理できている事が望ましい。
加工不良が発生した時に環境面での不具合要因が無かったかどうかを判断できるシステムが必要である。

これらの要素は、高精度な微細加工を実施する上で必要不可欠な要素であり、いずれが欠けても高精度なニーズに対応できない。
当社では、この要求に対応するための高精度微細加工機を市場に提供すると共に、四位一体の取り組みをお客様に提案し、微細加工の導きをしている。

3.「MEGA-SS400」の特徴

高精度高速小径微細加工機「MEGA-SS」
図1:MEGA-SS外観

図1は、当社の最新鋭の高精度高速小径微細加工機「MEGA-SS400」である。主な仕様を表1に示すが、従来の「MEGAシリーズ」をベースに先に開発された超高精度高速微細加工機「Android」に盛り込まれた多くの改善項目を反映し見直しを行い、様々な部分でバージョンアップが図られた。以下にその特徴を紹介する。

表1「MEGA-SS400/600」本体仕様
表1:「MEGA-SS400/600」本体仕様

3-1.高精度、高剛性の基本構造

現在、一般的には超硬合金の加工は、放電加工、ワイヤー放電加工、研削加工によって行われているが、実加工時間や段取り替え時間等を含むリードタイム、電極消耗が大きく形彫放電電極の製作が難しく、仕上がり面にできる放電変質層(クラック)除去の為の磨き時間が掛かる等、トータルな加工コストの低減が課題となっている。
そこで、超硬合金への直彫りへの転換が期待されている。
近年、工具の発達が目覚しく、電着砥石、PCD、ダイヤコーティング、単結晶ダイヤ等さまざまな工具が発売されているが、それらの性能を充分発揮して前述の転換を実現する為には動的振れ精度の高い高速高剛性の主軸を具備した追従性の高い高精度位置決め精度の微細加工機が必要不可欠である。

3-2.完全追従を追及した超精密位置決め機構

各軸には、分解能2nmのスケールフィードバックを備え、フルクローズドループ方式により、サーボモータに高分解能な電流・速度・位置指令をフィードバックし、高追従性を実現している。
各軸の送り機構は、大径化とショートリード化を実現した。これにより、サーボモータへの負荷を抑え、追従性を高めると共に発熱を低減している。
各軸の摺動案内には、高剛性円筒コロガイドを採用し、ラジアル剛性の向上と同時に真直精度の永年維持を確保し、ロストモーションを限界まで抑える事で、滑らかな送り性能と超精密応答性能を発揮している。
また、重力方向であるZ軸には、バランスシリンダーを採用し、サーボモータ及びボールねじへの負担を飛躍的に軽減し、スムーズなZ軸動作と優れた加工面品位、高精度なZ軸精度を実現している。

3-3.高性能主軸と万全な発熱対策

主軸廻りに於ける熱変位対策(Heat Isolation System)を更に充実させ、主軸ユニット内部の広域冷却ジャケットと主軸ハウジングの強制冷却による「ダブルジャケット方式」を採用し、主軸発熱の影響を除去している。
また、主軸頭内は、滞熱による影響を考慮し、強制排気機構を要し万全な発熱対策を施している。
主軸には、専用の高速低振動主軸を搭載し、主軸形状はMEGAシリーズを継承しており、高速回転でのバランスに優れた二面高速HSK-E25を採用している。
微細加工においては、使用される工具の径は小さくなり、高速回転領域での加工を行う事になる。更に、小径工具は動的な振れの影響を受けやすい為、高速回転領域で動的フレを抑える事が必然となっている。

3-4.安定した工具交換装置

ATC機構は、中間アーム方式のマガジン割り出し方式を採用した。
本方式を採用する事で、工具交換時間の短縮とホルダのシャンク部への切削剤や切粉の付着を抑え、更なる安定した工具交換を実現した。
ATC本数は、標準で20本を準備し、AHCシステム(自動ホルダ交換システム)を使用した長時間運転などの対応として、オプションで40本と60本が対応可能としている。

4.「MEGA-SD700」の特徴

MEGA-Sから2系統に分離した「MEGA-SS/SD」。 特に、小径微細穴明け加工における高生産性と高精度化を目的に開発されたのが「MEGA-SD700」である。 基本ベースは、先に紹介した「MEGA-SS400」と同様であるが、穴明け加工に特化した幾つかの特徴を以下に紹介する。

4-1.新開発の専用Z軸構造

先の「MEGA-SS400」の駆動方式は、各軸ボールねじを採用しているが、「MEGA-SD700」は、Z軸のみリニアモータ方式を採用している。
小径工具での穴明け加工では、微量のステップ量にて加工を行う為、Z軸の移動反転が頻繁に行われる。新開発の専用Z軸構造により、よりスムーズな反転動作と重心駆動にて最小な位置偏差が実現可能である。
又、小径微細加工に充分な切削速度を確保するために動的振れの少ない超高速回転主軸を搭載している。図2は、MEGA-SD700に搭載されている主軸の回転毎の動的振れ測定データを示したものである。高速回転領域でも振れが大きく変化せず、微細加工を安定して行う事が可能な主軸である

図2 動的刃先振れ
図2 動的刃先振れ


4-2.穴明け特化の新機能

スマートドリリングモードによる加工プログラムの単純化と穴数管理によるATC機能を搭載し、WPモードを選択する事で穴明けに特化したZ軸構造と相まって、更なる高精度・高能率加工を実現した。

5.特徴ある特別付属品

従来機より引き継いだ特長ある特別付属品を以下に紹介する。 いずれも小径微細加工を実現する為のアイテムであり、高精度加工を手助けする為の重要な機能である。

5-1.エアータービンスピンドル

ATC機構内に150Kmin‐1のアタッチメントを装備可能。
自動でアタッチメントを主軸に交換できる為、通常の主軸による荒加工から超高速回転を使用しての極小径工具による微細加工まで自動運転が可能である。
更に、極小径工具における適切な周速で加工可能である為、工具の高寿命化も期待できる。

5-2.非接触式刃高設定機能及び径測定機能

非接触式工具長及び工具径測定機能
図3.非接触式工具長及び工具径測定機能

金型加工における異工具での段差精度は、重要な課題である。
複数の工具を使用したときに工具間誤差を押さえる為には、できるだけ加工する状態に近づけて工具測定を行う事が必要となる。図3は、非接触式刃高設定機能及び径測定機能の測定装置である。本機能は、非接触レーザーによる工具測定をプログラム指令により自動で行うことが可能である。また。工具長のほか工具径も測定可能である。
実際に加工する回転数で、加工直前に測定する事が出来る為、測定値をそのまま加工に反映する事ができる。
本機能に於ける工具長の測定データを図4に示す。また、工具径の繰り返し測定データを図5に示す。いずれも±0.5μmの範囲に収まっており、安定した測定を行えている事が確認できる。測定に対する信頼性を確保する事で、複数の工具を使用したときの工具間誤差低減を可能にしている。

工具長繰り返し測定データ
図4:工具長繰り返し測定データ

工具径繰り返し測定データ
図5:工具径繰り返し測定データ


5-3.SUPER MACⅡ機能(自動芯出し機能)

工具先端位置の把握と共にワークの原点出しも高精度加工においては、重要な要素である。 ワークの原点位置出しを主軸に取り付いたセンサにて自動で実施する機能が、SUPER MACⅡ機能である。ATC内に格納されたセンサを自動交換で主軸に取り付け高精度な測定を実現している。 当社独自の10種類の指令ソフトと±0.5μm以内の繰り返し精度(実測値)を有するセンサにより簡単で高精度なワークの芯出しを実現している。

5-4.自動化対応(AHC)

EROWA製ホルダや3R製ホルダ等に対応した自動ホルダ交換装置を準備。 24、40、60本と選択可能なAHC装置を準備し、長時間の自動連続運転を可能としている。

5-5.その他のオプション

その他にも、加工後のワークを機上で確認可能なCCDカメラ付きホルダ&モニタ、CAD/CAMから出力された3D微小加工の点群データを高精度且つ高速に追従させて高能率な加工を実現するSUPER PCⅢ機能、砥石を主軸に取り付けて上下に高速に動作させる事で高品位な研削加工が可能なRG加工機能など従来機のオプションをほぼ網羅。 さまざまな加工内容に対応可能なオプションを準備している。

6.微細加工事例

以下に、「MEGA-SS/SD」による微細加工を紹介する。

6-1.鏡面加工事例

鏡面加工事例
図6.鏡面加工実例

図6は、POLMAX材へ金型をモチーフに鏡面加工を実施した事例である。
金型の直彫りでは、微細加工の要求と共に鏡面加工の要求が高まってきている。
これは、微細になればなるほど後工程での磨き工程が難しくなってくる為であり、可能な限りの磨きレスの実現を要求されている。
仕上げ用の切削工具は、当社オリジナルのLuminous工具を用いて加工実施した。この工具は、鏡面加工を目的に開発された専用工具であり、面粗度Ra0.017μm(17nm)という驚異的な面粗度と鏡面性を実現する事ができた加工事例である。(図7)

面粗度測定結果
図7.面粗度測定結果


6-2.極小径穴明け加工事例

極小径穴明け加工事例
図8.極小径穴明け加工事例


図8は、半導体素子の検査治具をモチーフに、マシナブルセラミック(ホトベールⅡS)へのφ0.1及びφ0.023の極小径穴明け加工実例である。
一般的に検査治具にはコンタクトピンを挿入する為の穴明け加工が施されるが、穴径精度が±2μ㎜以内といったように非常に厳しい精度が要求される。
その為、動的振れの小さな低速回転領域で加工が行われている。
MEGA-SDの主軸は高速回転域でも動的振れが小さく、従来よりも回転数を上げても要求加工精度を満たす事が可能である。穴明け加工条件を表2に示すが、回転数を上げることで送り速度も上げることが可能となり、今回の加工では、従来のφ0.1穴明け時間に対して、生産性165%を実現した。

φ0.1穴開け加工条件
表2.φ0.1穴開け加工条件

また、穴明け径の極小化と同時に穴位置精度の要求も厳しくなっていく中で、今回の加工では、図9に示すように±1.5μmの位置精度を達成した。

穴位置精度
図9.穴位置精度

7.おわりに

今回、最新鋭の高精度高速微細加工機「MEGA SS/SD」を紹介したが、今後も発展し続ける微細加工分野において、多様化するにーずに対応すべく、新技術の構築に取り組み、常に新しい提案を市場に行っていく所存である。。